戦争を知ってる子供たち
竜門勇気
戦争が終わってしまったので
僕らは生まれた
戦争が知らない子供たちだ
本棚が誰でも触れるようになって
本棚は僕らを広い荒野に放った
知りたいことは知れた
わからないことはなくなった
本棚はある日広がり始めた
一生かかっても読み切れないぐらいに
本当のことがいっぱい
嘘も同じぐらいにたくさん
今日ははじめての原爆が使用された日
昨日は百個目の原爆が落ちた日
明日は千回目の世界大戦終結日
未来は休日でいっぱい
戦争を知ってる僕らの子供たちは
いじめのない世界で暮らすかもしれない
いじめる奴なんてただの人間だし
闇夜に近寄る狂気も気づかないんだし
体液がほんの少しなくなって死んでしまうものだし
奪われることに敏感にならなきゃ生きてけない
戦うのも逃げるのも嫌なら
戦うのも逃げるのも嫌なら
誰かにやってもらえばいい
本棚は今日も広がってく
今日生まれて明日死ぬ
その繰り返しは善でも悪でもない
夢みたいな束の間だけ
自分の正義で
他人の正義を踏みにじれる
戦争を知ってる子供は
ちゃんとした正義を知ってる
知らなくていいことを
教えてしまったので
知ってる
未来は休日でいっぱい
倒れるためのドミノでいっぱい