夏の夜
シホ.N
僕らは暑い夏の夜
安い酒をあおっては
語らいつづけたものだった
僕はといえば
汗をかき
粘液質の肉体感覚に
いらだったりもしたものだ
君はといえば
汗もかかず
すっきり笑って
余計に僕をいらだたせた
しかしこんな暑い夏の夜
僕にはやはり君しかいなくて
君に語りかける幻想を
はっきり目覚めていながら
この肉体に体験していた
しかしながら
君には
言葉がなく名まえもなく
存在そのものさえ
とらえどころなく
肉体感覚にさいなまれながらも
言葉にしか生きられない僕は
君のことを
孤独とか虚無と
名付けざるを得なかったんだ