残暑
nonya


忘れ物に気がついて
もと来た道を引き返す

立ち塞がる湿気
項垂れた街路樹
焦げた揚羽蝶
嫌々巻き戻される遊歩道

本当は忘れたままで
良かったのかもしれない

纏いつく濁った汗
喘ぐハイビスカス
堕ちた花火大会のポスター
益々粘っこくなる足取り

忘れていいことばかり思い出すから
忘れ物が多くなって
その度に遠い目ばかりしていたら
近くが見え辛くなって
渋々眼鏡を買ってしまったけれど

そんなことより

時々優しく見えるようになった
雲の面立ちが癪に障る

時々控え目に頬を掠めていく
風の企てが癪に障る

忘れた場所と
気づいた場所を
ただ往復させるばかりで
またしてもおまえは
逃げ出そうとしている
びた一文残さずに

まだまだ
こんなに暑いのに
まだまだ
何も終わっちゃいないのに




自由詩 残暑 Copyright nonya 2012-08-16 21:04:05
notebook Home 戻る