一角獣
灘 修二

君はどこを見ているの?
何を待っているの?
僕には見えない
荒地の彼方にあるものが
霧の彼方にあるものが

そこは君が生まれたところ?
お母さんと別れたところ?

君は仲間とはぐれた
迷える子羊?
それとも
仲間を捨てた一匹狼?

そうじゃない。
君の見ているのは
昔から人々が畏れているもの。
君は首を長くして、
それを待っている
痩せた体と
華奢な足でまあるい大地を
楽々支えながら

君は岐路に立っているの?
右に行くの?
左に行くの?
そこは交わることのない右と左の交差点。

女神に寄り添う一角獣は
ただひとり満ち足りて
ただ立っている
ただ待ち続けている

君は息をもらした
悲しいと言ったのか
愛しいと言ったのか
僕には聞こえなかった

聞こえてきたのは
霧の音。


自由詩 一角獣 Copyright 灘 修二 2012-08-15 10:38:36
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