ミスト・ブルー
千波 一也
真夜中に
ひとりで開く小説は
難しさを持ち合わせない
さみしさの入り口、
でした
なりふりかまわず
一途にさまよえたのは
誰にもやさしい夏の日で、
つめたい雨のひと粒でさえ
わたしは覚えて
離しません
軽く、
とびらをノックしたのは
あなたでしたか
ひたむきに
待ち続けたのは
わたし、でしたね
もう
会えないけれど
他人じゃないなら、
あきらめなければならないけれど
小さな峠を越えるたび
ささやかな星を
思い描きます
教えるともなく
あなたが見せた所作のとおりに
奏でるこころの奥底に
おぼろな横顔は
消えて、
なじんでゆきます
鮮明に
わたしが
いまも持ちえない
痛みはそこで晴れていますか
浅く、
遠ざかる
波とよく似たやさしさで
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【親愛なる者へ】