professional
ブルーベリー
気付いたっけ
俺はもう定年までのあと少しば
注射針と一緒に歩いていて
今日も空は青く暑くて
ヘルメットの下で
やんだぐなると
溜息を吐いた、
んで、見上げたとき、ヘルメットの庇を少しだけ上げたっけ
汗がコンクリートに染みさなった
足跡などつくわけもねぇんだけど
これがその代わりさなんでねえかって
少しおっかなかった
サイレンが響く
と
思ったのは違う音で
ああ、あちらでもはじまったな、と眺めながらも
早く逃げなっけなあ、と
自分の刈払機を回す
コンクリートから
堀のそっち側さ踏み込めば
逃げ場を失った蜂どもが俺ば狙うが
ここは俺の領地だ、
ヘルメットの下
焼けた顔は口角を上げて不敵に笑ってっか?
刺されては針を打つ から
決して効率も良くはねぇんだが
俺だって三十数年のプライドはあるんだっけ
それは好き好んでのキャリアじゃねかったけっど
老兵さなった俺はこの領地を離れる訳にはいかねぇ
(他の部署に回してください)
ウウウウウウウウウウウウウウウウウウ
(「皆さん蜂に刺されないように注意しましょう」)
ウウウウウウウウウウウウウウウウウウ
(「どうやらこうたいが)
ウウウウウウウウウウウウウウウウウウ
(「保険適用外? それじゃあ会社で出すよ、申請して)
ウウウウウウウウウウウウウウウウウウ
痕ばっかり増えていって
なにものこんねがったなんて
そんな馬鹿な話はねぇ
ウウウウウウウウウウウウウウウウウウ
緑が舞う
石ばり多いな
気をつけなきゃない
ウウウウウウウウウウウウウウウウウウ
ウン、
木陰で缶コーヒー飲んでたっけ
若いのさ「何でこの仕事やってるんですか?」
って言われた
「馬鹿、今頃違う仕事なんてできねべや」
まさか自分が注射なしでできねぇ身体だとは夢にも
思ってねがったからさ
「他の部署に回してけろともよっぽど言ったんだけどもな、
アホどもいっそでしてけねがった」
「だったら辞めればよかったじゃないですか」
俺はコーヒーを一口啜った。
(何もしゃんねえのが、うっせえな)
「…んだな」
空き缶を踏み潰して俺は立ち上がり、刈払機のエンジンをかけた。
待ってくださいよ、と自業自得で休憩をふいにしたわけぇのが叫んだって
俺さはこいづしかのこってねがった、