冬漠手
木立 悟
目をつぶれば
左下への回転
何も得るものなく
つどう
貝の内側に踊る白
芯を持たない腕と脚
外へ外へ
出ようとする色
絶え間なく音が
宙に消えてゆく
すべてが悲しさで
すべてが あわれみで
またたくもののまま廻り
照らすもの 照らされるものを
冬より低い空に散らす
午後にさらに近い肌
斜面を覆う街が消え
朝にも昼にも人は無く
石の終わり 石の処刑場
断崖へ流れつく熱の色
風が裸足になり
浜辺ははじまる
青の火花 青の粉
首を傾げた視線に降る波
魚も船も水も灯り
棄てられる冬のうしろにたたずみ
近づくのか遠去かるのか
一本道にゆらめく影
指のようでいて指でない
頬の上の鍵盤が
羽に重なり 羽に飛び去り
何音あるかわからない
境界に
門ばかりが建ち
何を畏れているのか
外壁は 編むものにあふれ
冬に到く手
沈む腕
遠くも近くも
此処に在る夜
星をめぐる音
埒外の音
とめどなく失われなお
誰も居ぬ家の前に立つ