女って
まーつん

女って 大好きだ

女を喩えるなら
血の滴るような野薔薇の朱

生真面目な緑に身を固めた
この暗い原野の世界を点々と彩る
秘められた また明かされた 情熱の色

その両目は 傷つきやすい宝石のように澄んでいる
自分を包み込んでくれる 滑らかなビロードの運命を探している

女は常に求めている
…ように見える

そこが魅力だ

男はそうでもない
俺たちは ただ安らぎたいだけだ
出来得るなら 臆病者に身を落とすことなく
最後まで命を全うできれば それでいい

俺たちは生まれながらの つるぎ
ならば 女たちは それを収める鞘
俺たちが その生まれ持ったさが故に
誰かを傷つけようとするたびに その刃の憤りを諌めてくれるのが 女

女は愛を欲しがっているから 好きだ
なぜなら男達には 包み込む優しさよりも
突き刺すような鋭さの方が 真実だから

男は力の支配を信じている
女は力の醜さを知っている

女は優雅に泣くことができる なぜだろう
一体何処で彼女たちは 痛みに馴染んできたのだろう

男が泣くのは 城が崩れるのに似ている
それは敗北を意味する 俺たちの胸板は城壁
その内側に 小さなプライドや信念を抱え込んで
後生大事に守り続ける いつの日か どこかの女の美しい両腕が
その重い城の門扉を押し開き 爽やかな春の日差しを 招き入れてくれるまで

ちょっと理想化しすぎかな
全ての女が 競い合うことしか知らない 殺伐とした男の世界に
新しい生き方を照らす光を投げかける 天窓のような存在である訳もない

だけど女は いつも答えを求めている
…ように見える

例え 諦めきっているように見えても
若さや希望を 鼻で笑っているように見えても
煙草の煙の向こうに身をひそめ アルコールの泥濘の中で
蛇のように蜷局を巻いている時でさえも 求めることを やめられないように見える



この馬鹿げていて 空辣で
この上なく いかがわしい概念
まるで 神が仕掛けた壮大なペテンのように
世界全体を使って描かれた 色も形もない まだ誰も見たことのない

一枚のだまし絵 

女はそれを見回し 目を凝らし
見極めようとする 愛の真実の姿を
生まれ落ちた瞬間から 地に倒れ伏すその日まで

そういう生き物は 必然的に 美しくならざるを得ないのだろう
たとえ傷だらけの肉体をまとっていても その心は いつも 求めているから

闘いつかれた男達の城壁に その石積みの隙間に
蔦を這わせ すべり込ませて ついには崩落させてしまう 

女の優しさ その温もり

暗く冷たい地を覆い
群れ集いながら
また 孤独でもある
たくさんの 野薔薇のように


自由詩 女って Copyright まーつん 2012-08-09 23:45:19
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