Latin OSAKA
HAL
この街のひとがラテン系だと教えてくれたのも
陽気なラテン系のひとだって
その心には大抵ひとには言わないけれど
苦い悲しみを背負っているのよとも
教えてくれたのはきみだった
ぼくは生粋の大阪人じゃないけれど
15歳の頃からずっと大阪で生きてきた
確かに暑苦しいし うるさいし
平気で土足でひとの心に入ってくる
ぼくは最初はうっとうしい
ひとばかりだと想っていた
でもね ある日に気づいたんだ
きみに教えられた通り大阪のひとたちは みんな
悲しみを隠して生きてるんじゃないかとね
その目線で大阪のひとたちを視ているとね
それぞれに悲しみを知っているから
それを誤魔化す いや違う
それに気づかない振りをしているんじゃないかと
その想いで視てるとね
大声で笑い 喋っていることも
いつも無駄話ばかりしているのも
実はお互いに詮索してはならない線を
越えようとしないようにしているんじゃないかと
それからだよ嫌いだった
もっと正直に言うと軽蔑さえしていた
大阪のひとがどれだけやさしく
ひとを慮り労りながらそれを相手に
気づかせないようにしてると分かりはじめたのは
大阪のひとは確かに余り道徳的じゃないよ
でもね ひとを傷つけないようにして
できるだけひとりひとりで生きようとしている
それは一種自立して生きるために必死なんだとね
それからだよぼくがこの騒々しい街とひとを
好きを越えて愛するようになりはじめたのはね
見方を替えればひととひとが
絶妙にボケになったりツッこんだり
笑いながらつながっていると
沁みじみオモロい街に住んでいると感じだした
住んでみなきゃ分からないことってあるんだよ
だから余計なお世話をうっとうしいとは
想わなくなったし アニマル柄大好きで
派手でうるさい大阪のおばちゃんも
ほとんど気にならなくなった
でもぼくは阪神タイガースファンじゃないし
六甲おろしも歌えないけどね
でもこの街はどんなひとでも受け入れる
おおらかさがあり懐がとても深い
別にきみに東京からぼくの住む大阪へ
無理に来いよと言う気はないよ
知って欲しいのは
ぼくが大阪への恋心を持っていること
もちろんその想いのなかに
きみも入っているんだけどね