川は蛇行して背を伝う
手乗川文鳥



まりまりと育った
踏みつぶされて死んだ



夕方の河原で妹たちが裏白い顔で揺れている
剥がれない瘡蓋
喉元を細い波線が貫いて
噴き返る血流と漏れ出す呼気の
擦れ合う音
こんにちは、会釈をして
もう二度と会わない人と
記憶の中で刺し違えている、何度も
全身を充血させて
もう二度と会わない人を
本当に会わないようにする
もう二度と会わない人は
不思議と私と似た表情を作る
真似するなよ
胸元を最後に突く


深夜に
家の裏の暗渠に立っている
かつての川岸はそのまま生け垣になっている
苔むした石を積み上げては
浮かばれない子たちが
暗い眼で夜空を見上げている
月もでていないのに
眩しそうな素振りをして
私はあの子たちのつるつるの頭を
一つずつ撫でてやりたかった


吹き出た汗は冷えて
皮膚はひりひりしながら膠着する
腹部や陰部の体毛が濃くなって
体温は高いまま
からだは日々老廃物を排出する
垢なり、毛なり、皮脂なり、澱なり、
その一環として受け取った生命を
今必死で排出する準備をしている
おまえ、既にいつか死んでしまうことが分かっているのに
生まれてくるのか
なにも持たずに
手を握りしめて
沈黙のまま膨らんでいく腹から
重みばかり主張して
私は本当に殻になるのかもしらん
道ばたに半透明の殻になって
倒れて踏みつぶされるのかもしらん


ずっと一緒にいたい人や
もう二度と会いたくない人たちが
皆一緒くたに死んでいったあとで
積み上げていつか崩れた石が
緑色に苔むしながら
川底で冷やされている
こどもらの小さな裸足が
水面を弾いて光に灼かれている







自由詩 川は蛇行して背を伝う Copyright 手乗川文鳥 2012-08-09 18:15:36縦
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