夕暮れ へ
オイタル

玄関を出ると黒い靴ひもがほどけて
夕暮れの空が広がった
垂れ落ちた靴ひもの先に
老婆がつかまっていた
ぼくはほどけたひもを結び終えて
伸びをする
高く 大きく

今日の夕焼けの売れ行きを尋ねてみた
ばあさんは今日も手押し車で
赤く染まったあの雲の
焼けた具合を教えてくれた
自分は死んじまっているくせに
数珠を回して 念仏唱えて
ぐるぐる回って
死んじまったらいろんなことも
どうやら けろりと
忘れていった

かかとのあたりで 夜に傾く
蒼い石が光り始める


自由詩 夕暮れ へ Copyright オイタル 2012-08-08 23:05:15
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