雨のち夫
かんな


雨のち晴れの今日は
気分がすぐれずに中身のないことばを連ねている
消えてしまってもよいとおもう
しかし残ればそれにこしたこともないとおもう
どちらかわからない
要は思考がめんどうくさいのだ


こういう日は君に
そういえば君という表現は卒業した方がいいのだろうか
君は夫になったのだから
呼び名など存在からすればどうでもいいものだけれど
時に重要なファクターにもなったりもするね
なんでもいいがそばにいてほしい


半分に切られたスイカをスーパーで眺めて
手に取ったのはつい三時間前だったようにおもう
考えた時点で夏に負けてしまう
今日は夫のものとして
ハーフパンツとティーシャツを購入しました
金銭で手に入れられないもののほうがこの世には多いのかな


炭酸水の泡がはじけてことばが曖昧になってきたとき
これ以上連ねない方がいいような気がしたけれど
結局はこうして思考に抗うこともできずに手は動いている
五時十五分を時計の針がさすととたんに声がききたくなる
今日は定時で帰れそうでしょうか
こんな弱さは夫に見せるのもばからしいのでこのへんにしておきまして


しあわせとあんてい
ふしあわせとふあんていというのはイコールではない
海が安定していられるのはああして潮が満ちたり引いたりするからで
私と夫のしあわせが安定していられるのは
このようにしてぐだぐだと互いが愛を呟いたり呟かなかったりするからで
それほど不安定さというのは悪いものではないです


君が夫になったら
私は妻になるのでしょうか
細君とかいう呼び名もいいかと








自由詩 雨のち夫 Copyright かんな 2012-08-06 17:33:35
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