冷熱帯夜
ただのみきや
何かを言おうとしたまま
羽蟻に覆われて行く 月
寝苦しい夜の何処からか
微かに 悪寒が流れ
顔を隠した二人の忘却が
そっと 水浴びをする
乳房のように膨らんだ闇
白い 流木となった女は
触れられると 爆ぜ
火の粉をまき散らす
青く静脈に覆われたまま
妄想に囚われて行く 月
眠りの汀にたどり着けず
昨日から今日へと寝返りを打つ
街灯に照らされた蜘蛛のステップ
巧妙に巡らされた良心のトラップ
少しずつ 目を細めながら
やがて夢の泥沼へと沈んで行く
現の荷物の重たさに
真夏の夜が口を開けて笑う