冷熱帯夜
ただのみきや

何かを言おうとしたまま
羽蟻に覆われて行く 月

寝苦しい夜の何処からか
微かに   悪寒が流れ
顔を隠した二人の忘却が
そっと  水浴びをする

乳房のように膨らんだ闇 
白い 流木となった女は
触れられると 爆ぜ 
火の粉をまき散らす

青く静脈に覆われたまま
妄想に囚われて行く 月

眠りの汀にたどり着けず
昨日から今日へと寝返りを打つ
街灯に照らされた蜘蛛のステップ
巧妙に巡らされた良心のトラップ

少しずつ 目を細めながら
やがて夢の泥沼へと沈んで行く
現の荷物の重たさに 
真夏の夜が口を開けて笑う


自由詩 冷熱帯夜 Copyright ただのみきや 2012-08-05 00:07:07
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