盛夏
nonya
うなじに貼りつく蝉の声を
拭ったハンカチの上に
炎天下の用水路に浸した
素足のこそばゆさを重ねて
最後の線香花火が消えた後の
かすれた火薬の匂いの上に
水着の跡をたどった先の
夜明けの気だるさを重ねて
自分の無力を思い知った
午後の酷い西日の上に
年を経るほどにおしゃべりになる
煙になったはずのあなたの背中を
何度も何度も重ねて
てんこ盛りの夏が往く
平たい日常の皿の上に
極彩色の記憶の干し果物を
これでもかと盛りつけて
てんこ盛りの夏が往く
均された想い出の上に
悔いと痛みを利かせたルーを
嫌というほど盛りつけて