昨日夕方、
永乃ゆち


昨日夕方、あの人に偶然会いました。

表情も分からないくらい遠い距離だったけれど

大きく手を振ると

大きく手を振り返してくれました。

あの人は急いでいる風で

わたしは足が悪いので駆け寄る事はできなかったのですが

(それに立場的にも許されませんから)

すごく嬉しくて心臓がドキドキして止まりませんでした。

あの人が見えなくなるまで

そこに独り立っていましたが

あの人の事、本当に好きなんだと改めて思ったら

なんだか泣けてきました。



夕立でも降れば格好もつくのでしょうが

太陽は赤々と燃え落ちる間際で

長く伸びた影だけが頼りなく揺れていたのでした。

私の涙はアスファルトに蒸発していくばかりで

頬を伝う温かさだけが真実のように思えました。



あの人が好きで、好きで

誰かを傷付ける想いだとしても

この想いの為に裁かれようとも

どうしても手放せずにいるのです。


わたしはここで

一生あの人を待ち続けます。

季節が巡り、あの人の中でわたしが風化していこうとも

わたしは忘れはしません。

笑い声、目尻のしわ、細い指。

強く優しい、あの人の心。



わたしはここで

一生あの人を待ち続け思い続け

暮らしてゆきます。


それがわたしの愛の総てです。




自由詩 昨日夕方、 Copyright 永乃ゆち 2012-08-01 04:20:08
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