ひとつ ほどく
木立 悟






ちぎれた夕暮れ
地から昇り
光の前でひらく手のひら
ざわめく言葉に言葉を乗せる


青空の結びめ
白くほつれ
水のなかの岩
枕木を聴く


壁と壁と影
黒い水と影
街が街へせり出す歌声
かわき くだけ みなぎる


差異を笑みと感じたとき
人は人に現われる
どこまでも
北を向く磁石


うさぎとうさぎ
あいだのむらさき
まぶしさに そこに
すわりこむ


森を川に流す森
嵐は鳥のあとを追い
水草は常に話しつづける
人が人になる前の灰を


爪から爪
水と青空
疑いもなく都市をまたぎ
蝶の去った径を振り返る


乾いた海辺
石灰の塔
曇からは見えない
波の結びめ


午後にはひとり 賑やかになり
雨には雨さえ 取り残される
鈴だけが棲む
池のほとり


穴だらけの象の隙間から
羽の生えた森が見える
今かろうじて人である人
結びめを頬へほどきゆく



























自由詩 ひとつ ほどく Copyright 木立 悟 2012-08-01 00:39:26
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