バン
あおば

                      120730


音がして目覚める
不倫の後の目覚めは健やかで
配達人も遠慮する静かな午前
ギタリストのピアスを付けて
往来に立つのです
古風な旋律と
騒がしいリズムが
風を停滞させる午後になると
バンという音だけが屹立して
素直な色彩を形象化してテキストに変換してくれるから
ローマ数字に似た入り口を潜り
古ぼけた一室を通過し
扇状地に出ると
展開されたばかりのマーケットとが破産して
古着ばかりがメチャクチャに畳まれてうずたかく
目を塞ぎ向こう側も見えなくなっている
混乱はバンの合図で解散しなかったからだとわかる

不老不死の薬を求めて旅立った老人たちが
偽薬と知らずに買い求めては飲みつづけ
一文無しになって飢え死にするのを尻目に
深呼吸しようと今朝も往来に立つ


自由詩 バン Copyright あおば 2012-07-30 12:05:28
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