クリスマス師走にはします私だって
小池房枝

大晦日湯船ゆらりと船出する

月光もモザイク師走の露天風呂

女湯の体形の千差万別さ

年寄りが煮える源泉掛け流し

会社の灯年末週末クリスマス

靴下の中に手袋クリスマス

半額はまだかまだかのクリスマス

鳥骨の髄、猫にやるクリスマス

日没とともに半額パネトーネ

シュトーレンは賞味期限が正月までで


金色に一陽来復銀杏並木
 
ありったけお日さまを浴びてアリッサム

珍品のパンジーつまり珍パンジー

勿忘草忘れてないから咲かないで

百合根掘り起こしそこねてまた来年
 
何もかも地上はびしょ濡れ空に星

双子座を頂点に月は重心に

枕元カチコチ風邪の脳には五月蠅い

随分と火星にしても赤い星
 
この冬もでかい茄子だな帝王ダリア


ギョエテとは誰のことだと公孫樹

電線に同じ角度でヒヨが二羽

逢魔ヶ時チュッパチャップス自転車チャリを駆る
 
校庭の皇帝ダリアの冬休み

北からの歓喜ごうごう雲津波

年の瀬をはやみ惑星、砂時計

tenohirano nakanimauyuki suno-do-mu
 
戦跡のさとうきび畑のクリスマス

陸奥の猫魔ヶ岳もクリスマス

サックルを閉じてニ風谷クリスマス


冬薔薇 遊園地跡のクリスマス

博物館マリンスノー舞うクリスマス

詩の中のかわず深さを自慢する

ぞんざいな存在であれラフレシア

ゴーストと訳したハーンも押井も正しい

使い捨て持てばカイロの日和アリ

離島にはサンタは船で訪れよう

疾駆するピザ屋のバイクがサンタクロース
 
粧いを落とすや山は笑い含み

くるくると舞い上がるイチョウまた落ちる


クリスマス梅のつぼみも膨らんで

逢魔が刻ゆえか凛々しき散歩犬

崩れかけて崩れぬクイーンエリザベス

半円を描いてサザンカ散っている

ひこ生えの枯れ田のあるじ百舌が啼く

河原一面くっつきむしのキングダム

何の不思議もないことの奇跡キセキレイ
 
バリウムを呑んでエナガに会った道

ゲーテなるは堕ちてなお比翼の銀杏かな

クリスマス1ミリほどのヒヤシンス


閉店後暗闇の中のシクラメン
 
お茶の水渓谷今日も翡翠色

カンダタも学べよ書物は蜘蛛の糸

BOOKOFF来るなら来てみろ神保町

ハロウィンのカボチャも冬至の湯に柚子と

カラスウリ十ほど花壇にそっと置く

なお目から落ちぬ心のうろこがきらきら

クリスマス電飾ただびとこぞり合う
 
真っ青な空図書館にやって来た

何借りて帰ろう図書館夕焼け小焼け


散りきるや否や笑ってる冬木立

ビロードを脱がずに咲くか冬木蓮

特赦の日「蔵」のフィルターどっとはらい
 
新春に咲いてこそ梅 クリスマス
  
海のソラスズメは青いよ ふくら雀

つわぶきがタンポポのようだ冬至前

大根がずらりと浜のワカメ棚
 
一々が一期一会の海の波
 
そうめんと流れる言葉のようなもの

ことことと煮詰める言葉のようなもの


我とともに来たり我と滅べ我が言葉

引き出しに一つ鈍器のようなもの

窓際に一体 鈍器のようなもの

ありがたや雪に血塗れの傘地蔵

おそろしやこの札束は・・・傘地蔵

去年今年貫く鈍器のようなもの

冬の飢餓小鳥イラガの繭を喰む

つごもりの梅 白さだけ匂わせて
 
辛くとも/幸いにもって見えました

一画の有無の辛さと幸せと

 
矢の如くでなくていいのだ光陰よ
 
すえぞうも君の眷属サンダーバード

空と雲フラッシュするまでシェイクする

励起する蛍光灯の内側にいる

風と海さざなみ以下の震え走る

冬などは祓って北野の梅が咲く

シオマネキ詩など真似るな海を呼べ

玻璃の街 瑠璃の空 メリークリスマス

パンドラの薔薇 いつの日か咲きなさい

正月のようにミサゴが高く飛ぶ


カワセミの縄張りバトル翡々翠々

一粒の雫を小鳥は丸飲みに

鵜は鵜呑み頸より口より太き鯉

ふゆざくら三浦だいこん直売店

海苔の春いそぎんちゃくとアメフラシ

ひむがしに千葉ふりかえれば西に富士

レンブラントライト冬枯れた山肌に
 
一個体、一属一種ゴン太くん
 
身の丈の王国 我はここにあり

言葉たち服せよ我に生かされよ


木々に冬よ星辰を以って戴冠せよ

恐竜もクマムシも我が胸のうち

見えている景色にそっと手を当てる

はぁ、一句。溜息、俳句にならないか

秋も冬もお座りここにはその椅子がある
 
夏の形見どっさり入れてグラタンに

降る雪で空が全然見えません

ライトグレー重ねて空と雪と屋根

よく冷えた雪で部屋までついてきます

隣り合いふと溶けあってぼたん雪


ぼたん雪ユキダルマには向きません

急いでも急がなくてもあと少し

百様の羽様々な舞を舞う

フィクションも自己紹介ですプロフィール

ミモザ萌え馬酔木鳴り出す師走小春

街中の四季に花など枯れぬもの

冬が来て並木も人も露わになる

枯らせたいか嬉々と絡まる藤あけび


俳句 クリスマス師走にはします私だって Copyright 小池房枝 2012-07-29 18:44:48
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