光る円盤と四角な部屋
灰泥軽茶

それほどまだ情報が発達していない時代
町の駅前ショップ
一枚がとても高く
気軽に買えたものじゃなかったけれど
流行りものには流されたくなくて
出来るだけ自分の感性を信じて
小一時間そして二時間ずっと色々ケースを眺めては
裏表帯に書かれた言葉の感触を何度も
咀嚼して咀嚼して
さぁレジへ行くぞと

帰り道は胸が高鳴り高鳴り
どうか私に当たりくじを七福神様と
家に帰りきらきら光る盤面を
デッキにかけて
しんと張りつめた空間
音楽がとても好きでした

今となっては過去の遺物になりかけて
リサイクルショップに大量に並ぶ姿や
畑の害獣よけなどにきらきら光る姿を見ると
なぜだかとても眩しくて
目の奥に脳裏に焼きついた
今はもうない
自宅の四畳半本棚に並ぶ背表紙たちが
私に向かってくるりくるりと
回転しながらなだれて
私を埋めていく








自由詩 光る円盤と四角な部屋 Copyright 灰泥軽茶 2012-07-29 03:23:37
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