裸の世界
ただのみきや

 暗闇
日は陰り片隅に小さく蹲り
音は次第に存在を増す
そして閉ざされた門の中で響き渡る
かくれんぼの鬼のように
孤独に数えられる


何が見える(ざわざわと)何も(ごうごうと)
見えないものを(とりまいている)見る器官(引き伸ばされる)
現実は(境界のない)宇宙の中の(自転する自我)めまい


見開いたその瞬間
光の橋を駈け上り水晶の扉をすり抜ける
おぼろげなる現世の征服
脳裏を占めて増殖し
飽和する


 消失
忘却の地からの囁き
羊水の中で見た夢のように
無垢なまま研ぎ澄まされた
もう一人の自分という感覚器官
置き忘れてきた同胞


自由詩 裸の世界 Copyright ただのみきや 2012-07-27 23:23:03
notebook Home 戻る