島のもみあげ
灰泥軽茶

この珍味は何で出来ているかは正確にはわからないらしい
デパートなどに行くと稀に売られており
かなり値段も高く私もこれまでに一度食べたきりだが

とにかくすっぱい
首がもげるかと思うほどのけぞった
けれでもそのすっぱさを
しばしば思い出すだけで
のけぞるぐらいなので
そのすっぱさが癖になるのだ

ある貧乏なバックパッカーの話では
東南アジアの小さな島の一つを日本の商社が買い上げ
島民が昔ながらの製法で作り
島の中の工場で全部パッケージまで包装し
日本に輸出しているそうだ

現地の人々は昔からその島のことを
そう呼ぶので島のある所で採れ
島の人々は好んでは食べないそうだ
ただ島の男たちは通過儀礼の一つとして
一週間その食べ物だけで過ごし
夜の闇と語り先祖を呼び覚まし一体となり
一人前として成人するのだとか

黒くて細長く見た目は
ふさふさの毛虫のようだが
木の実のように硬く手で縦にカパリと開き
黒いすっぱい粒々がたくさん入っているを吸い
たびたび痙攣するほどのけぞる

海の匂いもすれば
山の匂いもする
虫だか植物だかわからないのだが
専門家が言うには自然のものから
抽出されたもので健康にも
大変良いものらしいので
二十年ほど前から
その商社の系列のデパートでのみ
売られているようだ



自由詩 島のもみあげ Copyright 灰泥軽茶 2012-07-27 04:26:51
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