それは、たぶん
阿ト理恵

「素因はたぶん、耳ね」
おまけに、抜け落ちる髪と繋がっている緩んだ肉体は耳のためにあるらしく
耳の熱を冷まして寝ないと
ふとんに泌み込む塩素にわたしの夜を知られてしまう

「結果はたぶん、口ね」
おまけに、剥がれる皮膚と繋がっているむくんだ脳は口のためにあるらしく
耳は水葬したがっている

「未来はたぶん、目ね」
おまけに、匂いが通り抜ける毛穴と繋がっている突起した血は目のためにあるらしく
光線しか抜けることができないガラス窓を越えて出発する
おまけに、脱出禁止の鏡を持って
わたしはあなたのところへはいかない
あなたもわたしのところへはこない
それは、たぶん、月を裸で散歩するようなもので
おまけに、
月の湿りの海のやや北、南緯12・3度、西経43・1度に彗星が
衝突した瞬間だったりするから
たぶん、素因もなく

たぶん、結果もなく

たぶん、未来もなく


おまけに、わたしもあなたもまだ出逢ってすらいないのだから










自由詩 それは、たぶん Copyright 阿ト理恵 2012-07-24 23:52:21
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