首都高
AquArium




ああ

星空が好きな君と
夜景が好きなあなたの
狭間で
同じ色の空を見ようなんて
そんなうまい話は
転がってはいない

のに

嘘だらけの夏の夜は
蒸し暑さと涼しさが
一緒くたにあたしを包んで
肌に確かな呼吸さえ、
許してはくれない

くらい

非常識な空間が
2年半前の冬を
連れてきている
変わらないことが
いいことなのか
悪いことなのか

なにも

動かないまま
あなたはバックミラーに
目を
見遣った
「もうすぐ東京タワーが見えるよ」

得意げで

時速80kmで流れる光が
やけに眩しい
遠くなる、
世界一僕を愛している君の
大きな手が
見えなくなっていく

ねえ、
さっきまで青白く
光っていたスカイツリーが
白の円盤だけになったこと
残念がってくれましたか?

左耳のピアスの模様とか
左手のブレスレットの珠の数を
焼きついてしまうくらい
見つめていたことに
気づきましたか?

それくらい

この景色は
特別で
もったいなくて
僕だけのものにしておきたくて
夢中で
夜景を撮り続けていた

でも

君が
どこまでも
冷たい風になって
ついに追いついたPA
飛ばされそうになる
小さな身体が
憎いや

ねえ、
もっと
もっと何モノにも
見えないくらいの
スピードで
首都高の
流線型になって
このまま
消えてしまおうよ
―・―・・―・・・――・・・・・---------------------------------



また

呼び起こす
あのときの
駆け引きの醜さや
心臓の脆さや
冷たい雨を
脳の中を駆け巡っていく

ああ

星の見えるところでは
キレイな夜景なんて
見ることができない
どうしても
見ることが
できないことくらい、
わかってるよ

だから

僕の向かう場所に
光なんて
ないのかもしれない
って
突然、
汐留JCTで
泣きたくなった





自由詩 首都高 Copyright AquArium 2012-07-23 23:34:41
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