誰も見たこともない泉の物語
灘 修二

近くの公園には
だれも見たことがない
泉があるという

のどの渇きを
感じる時計の針が
私を指し、
内臓がバラ色に変わると
わたしは
その泉を探しにでかけた

のどを潤したい
透明無垢の
一万年も時を経て
わき上がる
泉の水は
やはり透明無色で
輝いていた

掌をさしのべて
その水が唇に触れると
内臓が紺碧色にうねって
私は私の体内に突き落とされ
外と内が逆転して
二度と帰らぬ人となった


自由詩 誰も見たこともない泉の物語 Copyright 灘 修二 2012-07-23 02:03:47
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