ジーンとジザベル
雅寛
ジーン、生まれた事が犯した罪ならば、
ジザベル、今直ぐに僕を犯して欲しい。
僕等が同じ性で無ければ……。
僕等が兄弟で無ければ……。
僕の拳の臭いさえ愛おしく感じて。
赤く染まる君の頬を舐めて。
張り付く鰓を撫でてあげる。
湧き出る白い泉をそっと口にする。
……遠くで獣の声が響く……。
ジーン、淫らな君の名前を呼んで、
ジザベル、吐息を君の胸に零す。
僕等が同じ血で無ければ……。
僕等が恋人で無ければ……。
ナイフで切り裂いた君の無垢。
君の肉片を千切って振りまく。
剥き出しの君の心の臓を張り付けて。
僕は君の冷酷ささえ溶かしてあげる。
……遠くで獣の声が響く……。
……ああ、どうしてこんな事に成ったんだろう……。
僕は君の張り付く様な声が欲しかっただけなのに。
気が付けば何時も、全てが虚しく感じて、終わる。
横たわるのは、血塗れの君の残骸。
何時も君を思って、自分を慰める夜が全てだったのに!
ジーン、許されない罪ならば
ジザベル、贖う事すら出来ないの?
僕等が同じ液で無ければ……。
僕等が醜悪で無ければ……。
君のバラバラに裂いた腹の上で
確かに植え付けた種は咲くんだ。
それは掌を伸ばし、何処までも遠くまで。
枝が僕の指を傷つけて血を吸う。
赤く染まる無花果のつぼみに花が咲くんだ。
……誰も居なく成った楽園に、
僕は君のバラバラの木を埋める。
そして遠い未来……、
僕等の子孫があの木の下で愛し合えれば……。