うた(平出隆を讃えて)
瀬崎 虎彦
心臓の上に針の落ちる
展翅板で誇らかに 死んだモノたち
現代 死は 無知蒙昧の書き手が
自己憐憫を表出するコロキウム
冷静でいられない肩から上を
円錐で束ねるように押しとどめる
水に沈んだ傷が癒えるのを待つ
傷などどこにもない にもかかわらず
感情を吐露した主観の炸裂を
もう目に耳にしたくないという
活字は読まない 声はなぞらない
古びた樫の木の幹の
そのほど遠い客観の天涯に凍る
胡桃のような精神の決意
自由詩
うた(平出隆を讃えて)
Copyright
瀬崎 虎彦
2012-07-20 12:24:51