とげの音
カマキリ
街灯は静かに同じ夜を燃やしている
うすくかかった膜のような
どこにでもある話をしながら
特急を乗り逃して
ふてくされて爪を切っている
割と、大事じゃないような
そんなものに焦がれている
もう一度
答えてもらうのも悪いし
あの頃はよかったとか
粗探しはやめようと思っている
君と歩くことと、つま先が触れ合ったこと
銀色の多い商店街を
いつかの神話みたいに言葉を切って風が通った
忘れていくことと、思い出すのを減らすこと
喉からセンスのない文字列が
君の電気信号に反応しだしている
バレないように隠し持っていた虹色のとげを
水あめの中を泳ぐように
とろとろ投げた
高いところから見た低い光源は
なりたいものになろうと
握りつぶした炎によく似ていた