夜めぐる夜  Ⅵ
木立 悟





ひりひり冷たく廻る色
突然やんだり鳴り出したり
常にふいに聞こえくる影
長い長い長い径のうた


雨が降り
言葉は浮き
泡をつつき
外へ出てゆく


匂いは重く
背の骨に降り
ひとつおきの灯
眠る髪と頬


声がする うたになる
青と白 そのさかさまも
かけら かけら まわりながら
細い柱を削りゆく


右膝の光
径にあふれ
痛みを流れ
眠りの行方
しめし しめし


うすいうすい服を着て
空にも水にも出られない
雨のすきま 音のはざま
もうすぐ終わる 森の喉もと


去っても去っても在るかたちから
水も光も冬に降り
到くことなく宙に沈み
地にはふるえ 陰とふるえ


左目の踏切
ふりかえり飛び去り
血や水や しずくやかけら
受けとめきれずに泣く子のてのひら


指を上げすぎ
爪に星を呑み
ほどけ散る色
燃えゆく色


やって来るもの降り来るものの
空洞の軌道に指をまわし
何も持たないちからを奏でる
触れたら指が無くなるちから


水に映る灯がかちかちと鳴り
歩むものの上を光は歩む
径も色も水紋も
緑に落ちる緑を聴く


未明に招ばれ 未明を招び
あちこちで何かが焚かれ出し
煙は淡い鎖となって
遠くを遠くへ曳いてゆく




























自由詩 夜めぐる夜  Ⅵ Copyright 木立 悟 2012-07-19 10:23:43
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