初蝉
そらの珊瑚
夏を待つ間
透明な
ガラスのコップに
冷たい水を注ぐ
満ちていく
満たされていく
透明な入れ物に
透明の中身で
夏が来る頃
どこからともなく
水滴が現われて
コップの魂を捨て去るようにして
流れていった
庭先で
タチアオイが
ものもいわずに立たされている
この世の罪をまるで背負っているように
人は皆
なんらかの
罪を犯しながら
生きている
どこかで
搾り出すような蝉の声が聴こえてくる
超音波のような音が
鼓膜にぶつかりかなしみと共鳴する
蝉の魂は
あの声とともに
今はまだ
暗い土に眠る同胞に届くのだろうか