回転
草野春心



  干草色をした
  豚の死骸の、腹の上に
  尖ったつま先を押し当て
  バレエダンサーが回転している
  白く、
  白く
  バレエダンサーが回転している
  酸素を吸い込み
  空間を吸い込み、
  やがて彼女は
  彼女ではなくなる
  彼女は一匹の手長猿になり
  下腹の膨れた雀蜂になり
  巨大なナナフシになり
  筋骨逞しい青年へと姿を変え
  再びか細い女に戻り
  それを幾度も繰り返しながら
  バレエダンサーは回転を続ける
  豚の腹の膨らみがジリジリ焼け焦げ
  灰色の煙を上げても
  誰一人として
  彼女を観る者がなくても





自由詩 回転 Copyright 草野春心 2012-07-17 00:02:50
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