陽の当たる場所で
beebee







陽の当たるところ


その建物は言いました
都会には幾つも建物があるけれど
そのなかでもぼくが一番さ

ぼくは一番大きな建物じゃないけど
小さくはないよ
太陽が街並みから顔を出す時の
ぼくの顔を見て欲しいよ

光を浴びて
輝いているぼくを見てよ
建物のひびや
欠けも光の陰影となって
ぼくを輝かせる

若くて力強く
群を抜いて大きかったぼくを
周りの若い建物が抜いて行った
それでもこうやって
今日も暖かい陽が当たって
ぼくは輝いている

周りのみんなが一緒になって
大きく伸びて行った時代を
ぼくは懐かしく思い出す
みんなが力強かった
みんなが誇らしかった

その時ぼくたちは
東京の街を大きく膨らましたよ
ぼくたちは無精髭のように
地球をトゲトゲに膨らました

それぞれが別々に伸びて
ふっくらと膨らませた
ぼくたちは若かった
ぼくたちは自信満々だった

何だって出来るし
何だってやるんだって
意気込んでいた
それからずいぶん経ったけれど
ぼくたちは次の地平を望み
こうやって立ち続けている

だからぼくは想うんだ
朝日を浴びて
立っている時のぼくが
一番輝いて幸せな時なんだと

鼻先が赤く輝き出して
口元は自足の笑いで
頬を緩ませる
足元に陽が当たって
全身が黄金色に輝くよ

身体中が陽の光で暖かくなる時
ぼくは例え終末の日が来ようが
きっと笑って立っていられると
強く想うんだ
だってぼくは今を生きて来たんだ

髭剃りでガリガリと
いつか削り取られる日まで
ぼくは誇らしげに立っているよ
毎日背伸びをしながら
こうやってじっと
立っているんだ

朝日に向かって
ぼくは呟くよ
ぼくは世界中で一番誇らしくて
幸せなビルなんだって

ぼくは呟くんだよ
ぼくは呟くんだ




自由詩 陽の当たる場所で Copyright beebee 2012-07-12 07:43:17
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