無
HAL
ここは地の果てか
ここは海の果てか
いいや宙の果てだ
でもそれならなぜ
ぼくは息ができる
真空のなかで存在できる
なぜこんなにも星々近いのか
踏みしめようとしても大地の感触がない
理由が分かったよ
ぼくはテラとも呼ばれる星の
小さな島国で敵に撃たれて死んだん訣だ
それなら得心できる
ぼくはいま霊とも呼ばれるものになって
宇宙を漂っていると云うことか
生まれ返らせてやろうかだって
悪い冗談はやめてほしいな
もう一度人間として生きるのはご免だ
ここなら何も煩わしいこともない
肉体のなくなることがこんなにも
心地良いものだとは想わなかったよ
どうだい悩みだらけで
どうだいストレスだらけで
生きることに疲れ果ててるきみ
生きることに意味なんてないんだから
ぼくと同じにならないか
頷いてくれたらぼくのようにしてあげる
きみを霊にしてあげる
それは零になることだ
きみがずっと望んでいた
無になることだけれどどうだろうか