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瀬崎 虎彦
二人の関係は雨に見透かされていた
汚泥と良心とを綯い交ぜにしたテクスチャの狭間
しなだれかかる若さと僕のように老いを見据えた若さとでは
手に手を取り走っていくに道があまりに遠い
飛行船よりもゆっくりと旋回する
亡霊たちの華美なパレード
身心ともにあるいは心身ともに
ダンテ的な幻想の一歩手前、二歩先、あるいは
君に誰も恋をしなければいい
現実は亜鉛よりも軽い
ただフィルムに写し取られる悲喜劇の様相で
海面をたゆたう二匹のケモノ獣毛物
麗しい輪郭をなぞれば矢は走り雨となる
夕方ころには決まって感傷的な女たちの群れ