夏の匂い
yamadahifumi

夏という透明な雫
空の匂いーーー光の中で
あなたはいた
少女は往年の片時を忘れず
中年は幼時の微笑みを忘れて
時は進む
「ガラスは砕かれた玻璃の名残りだ」と
誰かが言う
その言葉は乾いた言辞の中を
優しい旋律のようにうねって進む
風は樹と樹の間を巧妙にすり抜け
あなたの下へ
あなたは飛んでいこうとする帽子を押さえて
その時、ようやく始めて
夏の匂いを嗅いだ


自由詩 夏の匂い Copyright yamadahifumi 2012-07-09 10:03:34
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