おまもり
peau
出口があまりに白過ぎて
産道の途中で立ちすくむ
心細さに
両手に暗闇をひとつずつ握りしめた
行く宛のないいのちはやがて
小さなひと型になって二本足で歩く
発達した耳に語りかける
眼前に聳える山岳の声が
ほうら、おまえ
その手にあるものひとつも落とさず
私を越えられるかと吠えている
眼前に広がる海原の声が
ほうら、おまえ
その手にあるものひとつも落とさず
私を渡れるかと唸っている
出来ぬなら代わりに
か弱い脚を置いてゆけと嗤っている
ひとつ取られ
ふたつ取られ
やがて山梔子色に夕暮れる荒野を
這いずり回って疲れ果てた頃に
頑なに閉じていた手からこぼれ落ちた
もうすぐあたり一面が
かあさんの懐から持ち出した
御守りで包まれる