虹だけじゃない
kauzak
虹の画家の回顧展を見に行った
虹のグラデーションで染め上がられた
フォルムの絵ばかりが流布していて
そんな絵しか描いていない
と思っていたから
異形のフォルムを纏った
怪物のような何かを殴り書きした
初期作品に衝撃を受け
アメリカに渡ってから目覚めた
インスタレーションの数々に
時代の先端を走っていたんだと
感じて驚き
虹の絵を描きだしてからも並行して
針金やロウで絵を作ったり
日常に溢れる雑貨をカンバスに張り付けたり
般若心経を画面いっぱいにデザインしたり
自分の知っていた彼へのイメージは
ほんの一握りに過ぎなかったと
痛感する
最近作の絵は彼の家の前に広がる
霞ヶ浦の穏やかな風景
らしいのだがまっさらなカンバスに
ロウで切れ切れの線がリズミカルに並ぶだけ
それでも目が離せなくて
絵の前に立ちつくしている
かと思えば身の回りにある雑貨を
片っぱしからカンバスに張り付けて
虹に染めた絵もある
虹色に染められた雑貨は
もはや何物でもなくなって
秘密のコレクションを見せられている気分
になって口元が緩む
フリーダム
大らかに自由に描かれた絵が
ポンと背中を押してきた