隠れ鬼
つむ

扇風機の前で
アイスキャンディを片手に
あああと言う
気まぐれ
その振動する声が
遠い青空の積乱雲を
かすかに
揺らす



しあわせな抜殻が
あちこちで彫像となっていて
着地点も見いだせないまま
めぐる季節の中に
きりとられている
一人称

どうして
終わるためだけに
大人になるのだろうね
みどりの海原を駆けて行った
野良犬のしっぽの先は今も
胸の奥をくすぐって
やまないのに

明るいだけの気まぐれで
外へ滑り出したけれど
無機質にふりそそぐ虫の声のなか
こうべをたれる向日葵のすぐそばで
自分の影の大きさに
気づいてしまう

あの夏から続いている隠れん坊
鬼はまだ探しにこない
雲なら ただゆったりと
誰かの夏を祝福しに
流れていった


自由詩 隠れ鬼 Copyright つむ 2012-07-01 20:20:19
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