世界の瞬間
yamadahifumi

眠れない夜は
魂が離散しているのだ

言葉をかき集めて
ほんの少しの灰を作る

それで暖をとる事も可能だろう
全てが生成と消滅に見舞われている現在では

君は今、言葉を覚えた
詩的言語という
語るには最も拙劣な言語を

君は日常会話の中にも
棘を差し挟む だからこそ君は

この世界を越えても生きていけるだろう

世界の一線を越えたまえ 
そこには君の見た事のない夕陽と美しい朝陽が
交互に消滅と生成を繰り返す場所

君は陽となり夜となる
君は照らし、また照らされる

「今ここ」という場所を越えたまえ 
現在の彼方は未来ではない

君の奥にいるのは透明な君ではない

君は今、詩的言語を覚えた所だ
語るに最も適しない、そうした言語を

だからこそ君は沈黙に似た真実を
この世界に 花瓶に入れた花のように
コトンと置くことができるのだ

君が一線を越えたその後、世界は
君の沈黙に見舞われる

人々は相変わらず他人共の言語で語り
他人達の衣装を身につけ
世界を自分流に飾り付けるが

それでも君や僕という陽と月は
あの空を照らし、照らされる

君は僕の言葉を聞きたまえ
僕の言葉は、君の魂のように
少しは美しく、真実を全うするだろうから

そして世界のゆりかごの中、僕らは
月と太陽のようにいがみあいながらも愛し合いもするだろう

人々の中に変わらぬ世界があり
僕達の中に変転する世界がある

詩は分からぬと人が言い
僕達が詩と音楽を奏で そして
世界は一編の朝に似ていく ベルリオーズの微かな旋律が
朝陽と朝陽の間から立ち上っていく
世界は今終わり、また始まった

「終わる」「終わる」とほざいている人々の死体からも
一つの花びらは天に昇る

さあ、言葉を失って世界を終わらせよう
もう一つの新しい世界の顕現へと
僕達自身を導くその瞬間のために


自由詩 世界の瞬間 Copyright yamadahifumi 2012-07-01 17:30:45
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