刹那的発泡詩 < 2 >
nonya


「怒」


怒れ
とりあえず怒れ

開けろ
風穴を開けろ

亀裂でもいい
そこから侵入しろ

浸透でもいい
じっとり考えながら浸透しろ

正義ではない
生活だ

生活の色を知らしめろ
生きているだけで
活かせない者たちに




「ハムカツ」


中途半端で
薄っぺらな生き様に
カラっと陽気な
衣をまとって

王道から
少し外れた裏通りを
四角い肩を怒らせて
歩いてきた

ノスタルジーなどと言えば
聞こえはいいが
肝心の中身は
なんとも粗末な蛋白質

さあさあ
もらい涙のソースが
染み込んだこの体
醒めきっちまう前に
とっととやっとくれ




「チカラ」


受け止めるチカラ

受け止めたものを
持ち続けるチカラ
持ち続けたものを
取り込むチカラ
取り込めなかったものを
潔く捨てるチカラ

生み出すチカラ

生み出したものを
疑い続けるチカラ
疑い続けたものを
逃さないチカラ
逃してしまったものを
決して許さないチカラ

そんなチカラしか
欲しくない




「土星人の君は」


カッシーニの間隙に
指を突っ込んで
ひらひらさせる

エンケの間隙に
好きなものを
順番通り並べる

キーラーの空隙に
細く切り裂いた紙を
ぎっちり詰め込む

タイタン生まれの君は
相変わらず
ケルビン・ヘルムホルツ不安定だ




「負」


負けたくない
崩れ落ちたくない
ひれ伏したくない
終わりたくないのに

僕の口と目と耳と指先と末梢神経は
負の頓服薬を求めてしまうから

自分の底に溜まった「不」や「無」や「嫌」の
苦くて酸っぱい澱はやがて

知ろうとするアンテナを錆びつかせ
考えようとする水路を濁らせ
語ろうとする葉っぱを枯らせてしまうだろう

負けたくない
傷を舐め合いたくない
卑屈に笑いたくない
終わりたくない

勝たなくていいから
負けたくない




自由詩 刹那的発泡詩 < 2 > Copyright nonya 2012-07-01 16:31:24
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