そして再び君と出会う
塔野夏子
梔子のかおりを運ぶ
early summerの風の中で
僕たちはまた君と出会った
思えばいくたび
僕たちは君と出会っただろう
雛菊咲く丘や
光る雲の上や
美しい夜明けのバルコニーで
だけど僕たちは
闇に沈む沼地や
どこにも色の無い砂漠や
苛立たしく燃える炎の中でも
いくたびも君と出会ってきた
そして君は会うたびに
新しく僕たちの目をさまし
会うたびに
変わらない笑顔で僕たちを安心させた
そして君はいつも歌っていた
語り部のように 予言者のように
けれど誰でもない君のままで
君と僕たちとは
約束を交わさない
けれど出会うたびごとにそこが
約束の地なんだ
アガパンサスを揺らす
early summerの風の中で
僕たちはまた君と出会った
たとえ何もかもが
呪いの渦に飲み込まれていっても
僕たちが君と出会ってきたそのことだけは
祝福の星座として
消えはしないだろう