白と黒との闘い
殿岡秀秋

闘いの布石をする
陣地を作るために
白石を置いても
ほころびはでる

黒い石を
囲んだつもりが
逆に囲まれて
陣地が取られそうになる

碁盤の闘いのひとところ
先を読むために重ねられた
思考の破片が
ケルンのように積まれる

ぼくは背筋を伸ばす
白と黒との街が高くなる
視線が街の谷間を
黄色い光の線になって飛ぶ

街の上に浮上し
上空から碁盤の目を眺めて
空き地を見つけて
着地する

新たに並べる白石が
ジグザグと曲がりながら
鎖のようにつながって
敵に取られそうな
陣地にまで伸びて
黒い兵士たちの間に割りこむ

石は一度置かれた場所から動かない

はじめは攻撃のために置かれたのに
黒い石に押されて
いつのまにか
守りの要になっている

盾となって立つと
左右に分かれながら黒石は囲もうとする
日の傾きとともに
白石の影は濃くなる

碁盤の街の迷路に入ったまま
黒石に封鎖されそうな
白石を救出するために
ぼくは指に石を挟む





自由詩 白と黒との闘い Copyright 殿岡秀秋 2012-07-01 06:52:57
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