六月の泣き女
明楽
彼女がひと泣きするごとに
季節を担う歯車は
輪転の速度を速めてゆく
染まりきれない紫陽花は
彼女が涙を流すたび
移り気なほどに装いを替え
まだ蕾を持たぬ向日葵は
満開の太陽に憧れて
ただ健やかに伸びてゆく
生まれ始めた入道雲は
無邪気に成層圏を目指して
好奇心と共に育ってゆき
大地は零れ落ちたしずくを
玉石のごとく大切に集め
実りの生命を育んでいる
濡れそぼった街並みは
抑圧された熱を孕んで
解放される日を待ち望み
百葉箱の中
数字は密かに上昇し
時が満ちたことを告げている
そうして
涙のあとに笑顔が覗けば
夏につながる架け橋が
青空 七色に横切って
2006.6