六月の泣き女
明楽

彼女がひと泣きするごとに
季節を担う歯車は
輪転の速度を速めてゆく

染まりきれない紫陽花は
彼女が涙を流すたび
移り気なほどに装いを替え
まだ蕾を持たぬ向日葵は
満開の太陽に憧れて
ただ健やかに伸びてゆく

生まれ始めた入道雲は
無邪気に成層圏を目指して
好奇心と共に育ってゆき
大地は零れ落ちたしずくを
玉石のごとく大切に集め
実りの生命を育んでいる

濡れそぼった街並みは
抑圧された熱を孕んで
解放される日を待ち望み
百葉箱の中
数字は密かに上昇し
時が満ちたことを告げている

そうして
涙のあとに笑顔が覗けば
夏につながる架け橋が

青空 七色に横切って


2006.6


自由詩 六月の泣き女 Copyright 明楽 2012-06-30 22:39:56
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