馬鹿だったぼくら
HAL

ぼくらは馬鹿だったのか知れない
違反デモに参加し火炎瓶を投げつけた機動隊に捕まったら
徹底的に暴行され治安を乱したものとして前科だって残る
でもぼくもぼくの仲間もそんなことを
一度も考えてみたことはないぼくらは心底の馬鹿だった

それは取りも直さず一流会社はもちろん三流会社にも
入社試験はおろか面接すら拒絶されることだった
でもぼくらはそんなことに想いを馳せない馬鹿だった
そんなことを考えたこともなかった
いつか世界をぼくらの力で変えることのできると
思い上がり自惚れていた馬鹿ばかりだった

いま就職氷河期だとはもちろんぼくらは知っている
何百社とエントリーしても徒労だと云うことも
もちろん知っているしきみらが未来に絶望を抱くことも
多少でしかないけれど分からない訣じゃない
でもぼくらよりもきみらは馬鹿なのだろうか

確かに酷い時代だと想うことに異議は唱える気はない
でもぼくらが馬鹿になる時代に生まれた様に
きみらはただ恨みすら抱く時代に生まれてきた
でもぼくらよりもきみらは馬鹿なのだろうか
なぜ小さな暴動の予兆はどこにもないのだろうか
きみらの受けた理不尽な世界に怒りは憶えないだろうか

そんなきみらはぼくらよりも利口なのだろうか
そんなきみらはぼくらよりも賢こいのだろうか
でもきみらよりぼくらは馬鹿だったのだろうか


自由詩 馬鹿だったぼくら Copyright HAL 2012-06-30 01:35:20
notebook Home 戻る