白いノートに捧げる巻頭詩/ii冊目
夏緑林

国道のアスファルトが車列もろとも溶け落ちてセンターラインの痩せ尾根が現れたなら
俺は歩いてみたい
両手で抱えた老木の幹が一瞬で消え失せてすべての枝葉が一斉に降り注ぐなら
俺は立ち尽くしてみたい
降りしきる雨粒が一斉に向きを変えて真っ直ぐにこちらへ向かってくるなら
俺はずぶ濡れてみたい
満員の通勤電車でひしめき合う人々全員に俺の顔と名前が知られてしまったなら
俺は逃げ出してみたい

いつか
世界中の電源が
一斉に抜け落ちて
そんな彼の妄想も記録もすべて失われて
発言する場所も機会も無いまま
あたし
立ち尽くしてしまうかもしれないけど
それでもノートがあるかぎり
ことばを選び続けていきたい

あたしどこまでも
ことばを探し続けていきたい


自由詩 白いノートに捧げる巻頭詩/ii冊目 Copyright 夏緑林 2012-06-29 20:47:31
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