家路
HAL

強い雨がからだを叩く
吹く風はずっと向かい風
傘なんてまったく役には立たない

だからさっき橋の上から
激流に放り捨てた
その茶色の濁った水が目指すのは
どの水も同じ所

きみよ俺だってそうだ
きみが暖めてくれている部屋へと
家路を急ぐ家路を向かう
邪魔するものは蹴散らすだけ

とにかくきみの待つ家路へと
とにかく愛しいきみの元へと
俺は歩みを止めない

そこにきみがいるのを知っているから
電気の点いた部屋を開けたとき
きみときみの笑顔が見えるから

俺はずっと灯りの点いていない部屋に帰っていた
足どりはいつも重く誰も待つことのない部屋に

でも俺はきみと巡りあった
同じ時代に生まれたきみに出逢った

その返礼にジーザスにもモーセにも
アラーでも釈迦でもひざまずき
その足を舐めたっていい

俺はきみと巡りあった
同じ時代に生まれたきみに出逢った

それは長く荒んだ俺の人生に
これまで聴いたことのない
美しい音楽が流れはじめたようだった


自由詩 家路 Copyright HAL 2012-06-29 03:58:02
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