サバ人間
灰泥軽茶

昨日の〆サバがあたったのか

朝起きると吐き戻しお腹も刺すような痛み

背中がかゆくてたまらず

爪を立てるとなんだかツルツル滑る

鏡に背中を向けて首をひねると

なんとも綺麗なサバ肌

不安定な恰好でフラフラしていると

サバ肌がキラキラ煌めき目の裏がひくつき

薄暗い記憶が青く瞬く

私は海中を流れる光の渦に潜り

己の使命をヒタヒタと感じクルクル回遊する

そんな郷愁溢れる気持ちになりながら

お風呂に体を横たえ蛇口をひねると

少しづつ水が体を浸してゆき息苦しくなってゆく

だんだん意識は遠くなり

あぁ私もこれで一匹の鯖となり一生を終えるのだな

願わくば照り焼きにして

箸で丁寧にほぐして食べておくれと

感傷に浸っていると

なんだか肩甲骨あたりがスースーしてきて

気持ち良くなってきたのだ

こうして私はサバ人間となって生まれ変わったのだと

ゆっくりのっそり怪人の如く

起きあがり鏡をみると

平凡な私がひとりいた




自由詩 サバ人間 Copyright 灰泥軽茶 2012-06-28 00:57:51
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