サイダア
nonya
夏の盛りの
透明な記憶の破片
縁側のよしずの陰の
幼すぎた沈黙
君のちっちゃい手が
大人びた仕草で
泡立つコップを
気まずさの真ん中に
ふたつ置いた
言葉の結び目が
なかなか解けない僕は
眩しいふりをして
うわの空ばかり
見上げていた
汗と甘い匂いがして
思い出したように
風鈴が鳴って
君の浴衣の袖には
朝顔が咲いていて
偶然
合ってしまった
目と目
慌てた僕が
日に焼けた笑顔を作ると
恥ずかしそうに君は
日に焼けた微笑を返してくれて
一気に
温くなったサイダアを
飲み干したけれど
好きとは言えなかった