滑走
中山 マキ















相変わらず定まった向きで沈む
僕を含めた人々の群れが
溺れもせずに器用に進む
東京では何処も見慣れた世界

誰かの痕跡が消えていることを知りたければ
インターネットを使えば容易い
趣味趣向も分からない人々が
夜毎死んでいく

心を上手に蝕んでいるのは極端な孤独
過去も未来もやがて分からなくなると
闇に向かって耳をそばだて
悲しみの意味も分からないまま
すすり泣くようになるんだ

力を入れて叩けば砕けてしまう
敢えて拳を握らずとも
姿勢の美しい樹木の心も
背骨が虹のように折れ曲がった老女も

汗を拭い呟く言葉は
風の音より儚く弱いけれど
口にすれば1人ぐらいは振り返るだろうか
関心と無関心が入り混じった
難しい瞳で

信号が青から赤になる寸前
鳴り響く受話器を上げる瞬間
眠りから覚める一瞬
この思いを見透かすように瞬く光が
眩しいほど尊いことに改めて気付かされる
生も、死も










自由詩 滑走 Copyright 中山 マキ 2012-06-27 16:29:42
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