密やかに蛾は待ち続け
アラガイs


雨脚が近づいてくるように予感があなたを誘う
ときめきじゃなくやって来て、互いに踝を確かめ合うの
小さな小銭は持たない
それ以上詮索はしない
寄り道をするように、濡れた肌の一滴を舐めあうだけで、遠回りに見つめてはいけないから

【マンション地下の駐車場】
薄暗い静寂は下界を梱包する迷路への入り口
混在に紛れて映し出す密やかな液晶
編み目の帽子と大きな鞄二つで
わたしは誰とでも添い寝できる、おんな
羽化をしながら気化をして忘れ
寝苦しくなれば、いつでも逃避できるのよ

車を使うひとは知らないでしょう
漏水は地下道に流れこみ
下衣はごみ箱に捨てられる
昼間この街に足を止める場所なんて、本気で探せば見つかるものよ
折れ曲がる細い路地を抜ければ川下には幾つもの橋が架かり
沿いの広場で遊ぶ子供たちと若い母親が、日暮れとともに帰ってゆく
それをじっと眺めては明日を考えるのが好き
引きずらない、出会いが好き
信号機が赤に変わり
すばやくホテルから出て行った車
自動販売機で冷たいお茶を買う
いつものように携帯から呼び出しのメールが鳴る
生の声って身体が覚えているから嫌いだ
外の景色も見なれてくると、小難しい小説だって読めるようになるわ

ビルとビルの隙間
騒音に焼かれ、熱い風が引き込まれ、巻き返し
、狂いそう、髪は汗に乱さない、歩いては立ち止まる、日陰
、人混みの中、繭糸を避けてはじっと待っているの
「席の空いた選挙カーが素早く白い手を振って通りすぎた」
常識なら自覚してるから
目立ちたくはないけど見られてる
何処とも知れないあなた
宵の灯りが忘却をはじめ、また汚れた紙を吐き出すの
、不似合い?
生活、そうね
、美、密やかに、曇り
それが
、わたしの努めだから 。









自由詩 密やかに蛾は待ち続け Copyright アラガイs 2012-06-27 00:46:02
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