貸し家
そらの珊瑚

わたしたちの細胞は
毎日少しずつ
死んでいる
そこには
痛みもなく
悲しみもなく
怖れもない
どんなからくりなのか

思えば
自分の身体なのに
知らないことだらけだ
いや、違う
持ち家ではなくて
自分という心が
しばし借りている
貸し家だったのだ
この身体は

大家に会ったことはないが
たぶん家賃はいらなくて
(実はタダより高いものはない)
どうにかこうにか
修繕しながら
暮らしていくしかない

時々
雨漏りなんかして
困ることもあるが
晴れた日には
スキップなんかして
鼻歌でごまかしつつ
暮らしていくのもいい

賃貸契約は結構ゆるく
改築可
ごみ出しは各自のマナーで
(溜め込み過ぎはいけません!)
とあるが
遵守しなければならないのは
あばら家になったら
立ち退かなくてはならない
という一点だけ
建築(医療)技術が発達した現代では
又貸しという
新たな項目も追加されたようだ

いずれ
退去するまでの借り住まい


自由詩 貸し家 Copyright そらの珊瑚 2012-06-25 11:12:33
notebook Home 戻る